「、、…」
谷ぽんの友達のあの子から、咄嗟に目を背けた。
悲しい顔のその理由を、すぐに理解できたから。
いつだって私も感じる想い。
フワリくんの隣にいる子は誰?って。
その子は彼女?好きなの?特別なの?って。
何度も感じる想いを、誰かが私に向けていることがあるのかもしれない。
全然、私とフワリくんは特別なんかじゃないのに。
違う角度から見れば、立場を変えれば……見え方だって、全然違う。
フワリくんの隣にいる今だって、私の気持ちはあの子の気持ちと同じなのに。
「ほら、さっさと朝倉んとこ行きな。私今メロンパンに集中したいの」
「ほんとえらそーだな、あずさ。」
「、…」
教室へ歩き出すフワリくんに続いて、私も歩く。
きっとまだ、あの子は見てる。
複雑な顔を浮かべながら、こっちを見てる。
あの子は私なんかより、よっぽどフワリくんに近い場所にいるはずなのに……
「あずさ、うるさく、なかった?」
「あ、イエ……」
「あいついっつも、あーだから、」
「ハイ……」
後ろを歩いていたはずなのに、フワリくんはいつの間にか隣にいる。
歩幅を合わせてくれているのか、歩く速度が、丁度いい。
「女、捨ててんじゃん。」
あずりん先輩の話をするフワリくんは、どんな顔をしているんだろう。


