一瞬、ここでなにをしているんだっけって思った。
フワリくんに持っていかれていた心を引っ張り戻して、本来の自分の仕事を思い出す。
「あ、の……大原先輩、衣装のサイズ、」
「……ぇ」
「聞いて、も、……」
「…………」
「……?」
なんだろう。
見えたフワリくんの横顔が、ストローを咥えたまま固まった。
「ぇ……ま、待って、、なん、で、」
「……?」
かと思えばその横顔は、少しだけ、恥ずかしそうに照れている……ような?
「………な、ん、で、」
「え?」
「なんで、俺の名前、知って、……んの。」
「……」
名前。
なんで、って……え、そこ、そんなに驚くところ?
「ぇっと……たまたま、……知って……まし、た……」
「あ、……そ、か」
「……はい」
そっか、先輩たちはみんな『大ちゃん』って呼ぶから。
たまたまって誤魔化したけど、『大原』って知っているのが今更不自然な気がしてきた。
大丈夫、……だよね?
知っててもおかしくない、よね……?
「あ、……えと……衣装、?」
「……衣装……あ、そうです、衣装のサイズ、わからなくなっちゃって……あの、教えてもらえます、か」
これって……よく考えたら私が聞きに来るのおかしくない?
衣装係でもないし、フワリくんの衣装を手伝ってるわけでもないのに。
どうして関係ない私が来たんだって、フワリくんに怪しまれるんじゃ……


