「ちゃんと伝えないと、このまま卒業になっちゃうぞ」
「んー……よくは、ない、けど。」
もう、ここで泣いてもいいですか。
だって、こんなのもう確定だ。
やっぱりフワリくんは、あずりん先輩のこと……
私の腕を必死に掴んでいたヨッコは、いつの間にか手を握ってくれていた。
涙が喉の奥から込み上げてきて、今にも零れ落ちそう。
……だったのに。
「そうだ、高橋さん見なかった?」
突然出て来た自分の名字に、涙が引っ込む。
わた、し?
いや、3年生にも高橋はいるだろうし、菊池先輩に捜される理由もないし、違うか。
私なわけ、ない。
「そこの影に、いる。」
「……。」
なんで……バレて。
いつから、バレ、て……
いや、それよりも高橋って、私のこと……?
死角になっていた場所から、菊地先輩の顔がひょっこり出てきた。
「あ、いた。高橋さんこれ雄介から。昨日チョコパン食べちゃってごめんねって、預かってきた」
「……。」
渡されたのは、板チョコ。
チョコレートが好きと、思われてる?
「あ、りがとう……ございます」
「うん。あれ、葉子ちゃん?」
「う、えっ?」
俯く顔を覗きこまれたヨッコは、掴んでいた私の手をキツく握った。
それが思いのほか痛くて顔を上げたら、菊地先輩の少し後ろにいたフワリくんと目が合った。