「あ、じゃあ私が、」
「私、行きます!」
ヨッコは旗係の手伝いをするから、私が行こうとしたんだけど。
持ちかけていた本を置き、ヨッコが私より先にあずりん先輩の元へ駆けだした。
「私行くから、この本、お願いねっ」
そう言い残し、二人はあっという間に衣装係の元へ行ってしまった。
多分、フワリくんのほうを私に手伝わせてくれる、ってこと……なんだろうけど。
あれれ……またしても私、3年生の教室に1人取り残されてしまった。
教室の中にいるのは、私とフワリくんと、1年男子の桑野アキラの3人きり。
嬉し恥ずかしい気持ちが、じわじわと沸いてきて体が火照る……
取り合えず頼まれたこと……やらなくちゃ。
「……これ、コピー…してきます」
どんな小さな声だって聞こえちゃうのは、広い教室に3人しかいないから。
私の声に、フワリくんが顔を上げたのが見えたけど、気にせず本を持ち上げた。
結構重いけど、まぁ大丈夫、いける。
それより早くコピーしないと、みんなを……フワリくんを困らせる。
静かな空気に押されるように、持ち上げた本を抱えて歩き出したとき……
「ななちゃん。」
「、…」
ほんとに突然、なんの前触れもなくフワリくんに名前を呼ばれた。


