名前を声に出すだけで、心臓のドキドキが半端ない。


初恋じゃないのに、初めてじゃないのに。


なのに、こんなに胸が締め付けられる恋は、初めて。


息をするのも、瞬きをするのも、足を動かすのも、全部が自然に出来なくなる。



フワリくんに、体の全てが持っていかれる……



「3年何組なんだろ」

「誰か3年に知り合いいないの?」

「もゆぴーのお姉ちゃん3年じゃなかった?」

「あっ、そうかも!探り入れてもらう?」

「ねぇなな、」



みんなが話を進める中、私は置いてけぼり。


違うの、違うの、嬉しいんだよ。


でもね、心臓が……



「…心臓、壊れそう、……」



真横を通って行ったフワリくんが。


0.5秒合った目が。


窓の向こうに見えた、こっちを向いた顔が……



「……もう、もう……フワリくん…やば、い、」

「いやあんたの方がやばいから」

「萌えすぎでしょ、フワリくんに」

「恋、してんねぇ」



フラフラと、酸欠気味の私を支えてくれる、みんなが好き。


優しさが滲み出る、フワリくんの横顔が好き。


思い出すだけで火照る自分の体温に、これ以上フワリくんに近付いたら溶けてしまうんじゃないかとすら思った。