「で、告白されたの?されてないの?どっちなの!」



まるでこの教室のボスのように、あずりん先輩は全ての話を進めていく。

その存在感は、女子とは思えない程すごい。



「され……た」

「まじ!?うっそ、1年見る目ねぇー!」

「うるせえぞ佐伯、俺こう見えて結構モテんだかんな!」



3年生のやりとりが面白くてミサンガから顔を上げて笑ったら、正面に見えるフワリくんが、やっと顔を上げて可笑しそうに笑っているのが見えた。


声こそは聞こえないけど、眉を下げて肩を揺らして笑ってる。



告白した1年生の女子がいるんだなって、人の恋愛事情なのにドキドキした。


だってどうしてそんなことができるんだろうって。


私はコーヒー牛乳1つ渡す勇気もないのに。


世の中の女子は、私の想像以上に凄い。



鼻に手を当てて笑っているフワリくんが、こんなにもすぐ傍にいるのに。


たったの数メートル先に、いるのに。


その距離は、果てしなく遠い気がする。


フワリくんの日常の隅っこに、少しだけでも私の居場所があるとしたら、コーヒー牛乳だってもう少し簡単に渡せるのかもしれない。


でもフワリくんと私にあるのは、ただの壁。


近いようで全然遠い壁が、目の前にある。



……でも。


勇気は、誰の中にもあるのかな。


こんなに臆病な私にも、がんばれば、振り絞れば、あるのかな。



「ん。休憩。飲みもん買ってくる。」



手を止めてペンを置き、フワリくんが立ち上がった。


立ち上がったフワリくんは、疲れたように肩に手を当て歩き出す。


歩くその途中、ミサンガを編む私の前を通る直前、フワリくんと、……




「、」


「……。」




目が、……合った。


コーヒー牛乳!って思ったけど、やっぱり恥ずかしくて、目を逸らす。