「私傘持ってきてないんだけどー」
「へっへっへー、俺持ってる~」
「よし雄介!帰りは私のことよろしく!」
「は?スーだって持ってんだろ」
「え、持ってない」
「はぁ!?お前ら天気予報見ろよ!」
「朝は低血圧だからテレビなんて頭に入らん!」
「自業自得だな。俺の傘は頼るな」
「へー、じゃあ私が濡れて風邪を引いて貴重な高校生活が台無しになったらあんた責任とってくれるの!?どうやって!?私学校好きなの!風邪で休みたくないの!土日も来たいくらいに高校生活エンジョイしてんの!」
「心配すんな、バカは風邪ひかないって言うから」
「……雄介。あんたがLINEしてるだーーい好きな2年5組の、」
「うあー!うあー!!うあー!!!」
「傘、入れてくれるよね?」
うふふっと笑うあずりん先輩に、私たちは大爆笑。
「つーか菊も持ってんだろ。菊ー、傘持ってる?」
教室の隅っこで弟と仕事をしている菊地先輩に、大きな声が飛ぶ。
「あるけど」
菊地先輩も一連の流れを見ていたようで、可笑しそうに笑ってる。
「菊の傘ちっこから嫌。雄介のがいい」
「いいけどお前バス通じゃん。俺電車なんだけど」
「この私をバス亭まで送りやがれ」
「うっわ。アイスおごれよ」
「出世払いでな」
「……へーへー」
「雄介先輩と佐伯先輩って、仲いんすねー」
私の目には、フワリくんとあずりん先輩が仲良く見えていたのに、違う人から見ればまた違う風に映る。
なにが真実かなんて、私には全然、わからない。


