「……うし。…終了。」
もりりんの汚い机に、ドカッと置いた本は山積み。
崩れそうだけど、直す気はない。
私にも、フワリくんにも。
「……崩れ、そう。」
「……です、ね」
なんて会話をしてみるものの、直そうとは決してしない。
「いいや。行こ行こ。」
手伝ってくれてありがとうございました。
またしても言うタイミングが掴めないまま、職員室を出た。
言いたい……でも、言えない。
聞かれたことに答えるのが精一杯なのに、自分から声なんて掛けられない。
だけど言わないと、礼儀の知らない常識のない子だと思われちゃいそうで。
「……教、室…?」
「…、ハイ……あ、イエ…!」
「…、んん?」
多分、3-2に行くの?って聞かれて、思わずハイって答えたけど。
違う、私はみんなに飲み物を買いに行かなきゃいけないんだって思い出して。
よくわからない返事をした私に、フワリくんは笑った。
「……あと、で……いき、マス、…」
笑った顔を見ただけで、胸がぎゅっとなって言葉に詰まる。
私の頭の中の日本語は、フワリくんの前だと全部消えてなくなるみたい。
「……んじゃ。また、あとでネ。」
またあとでね。
教室に繋がる階段を上がって行くフワリくんの背中を、最後まで目で追い掛けた。
もうダメだ。
もうダメだよ、もう……
やっぱり私、
泣きそうだ……


