体が離れると綿星くんの体が光り始めて形を変えていき、動物───バク───の姿になった。目を見開いているとバクは綿星くんの声で話し始めた。

「咲穂が子供の頃会った(バク)───中国の伝説の───は俺だよ。」

「えっ・・・。」

確かによく見てみるとあの時の動物が大きくなったような姿をしている。でも、そんなことが───!?目の前で見ても信じられない。やはりこれは夢なのだろう。

「動物園にいるバクは、伝説の動物の獏と見た目が似てるからその名前になったっていうのは知ってる?」

「う、うん。だから動物園のバクが悪夢を食べる、ってわけじゃないんだよね。元は中国で伝説の動物である獏の絵を描いて邪気を払う風習があったりして、日本に伝わる時に『悪夢を払う』が転じて『悪夢を食べる』っていうことになったとか。」

「・・・さすがだな。なんだか嬉しい。」

バク・・・いや、獏と会話をしているなんていくら夢でも不思議な気分だった。