第一、プリンセス的存在のエマが、私なんか眼中に入れるわけもない。


瀬戸君は一旦立ち止まり、振り返る。


その色素の薄い黒目に、一瞬ドキッとする。


綺麗なんだ……。


瀬戸君をこんな至近距離で見たのは初めてで、綺麗な黒目に釘付けになる。


「エマは、自分の思うように行かないとき、人に八つ当たりする癖があるんだ。本当、迷惑なヤツ」


そう言い、一瞬微笑んで歩き出す。


あ――。


エマの話しになったからだろうか?


その笑顔が妙に優しく見えた。


私はそれについて歩きながら、目の前の大きな背中をボーッと見つめていたのだった……。