見たことのある顔。


たしか、隣のクラスだった気がする。


「ただ、エマの奴お嬢様だからさ、いう事聞いたように見せなきゃ、あんたへのイヤガラセがもっとエスカレートするからさ」


「じゃぁ、もしかして、助けてくれたの?」


そう聞くと、少し恥ずかしそうに鼻の頭をかいた。


なんだかわからないけど――。


よかった……。


この人たちは私に危害を加えない。


そう思うと、気持ちの線がゆるんで不意に涙が浮かんだ。


「ふぇ……」


ポロポロと流れる涙に、男たちは困ったような声を口々に呟く。


「おい、泣くなよ」


「だって……急に口塞がれるしっ……いっぱい男の人出てくるしっ……怖かったんだもん」


思い出しただけでも、全身に鳥肌が立つ。


「悪かったって、な?」


「ほら、飴やるよ」


「なんならタバコでも……すわねぇよな」