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それからは、何事もなく時間は進んで行った。


結局、ラクガキの犯人が誰かはわからない。


でも、知りたいとも思わない。


別に違法なことをしているワケじゃないんだから、堂々としていればいい。


そんな態度が、気に入らなかったみたいだ。


昼休み、いつものように桃子と一緒にお弁当を広げようとしていた時。


「今日は『バーチャル彼氏』で遊ばないのぉ?」


そんな、いやみったらしい声が、私の耳に届いた。


振り向くと――。


クラス1の美少女、伊藤エマ(イトウ エマ)だった。


彼女は大きな目を細め、艶のある漆黒の髪をなびかせ、鮮やかな赤い唇を薄く開けて笑った。


ラクガキの犯人はこいつか……。


男子からは超人気。


今も数人のクラスメイトたちをご飯を囲んでいる。


女子からは超不人気。


友達なんて1人もいない。


「学校の裏に呼び出されて告白されてるとき、偶然みちゃったのよね」