「ううん……。あったけど、でも、大丈夫」


「言いたくなったら、いつでも言えよ?」


ポンポンと頭をなでてくれる。


暖かい手は、向日葵と同じだ――。


「瀬戸君は? どうしたの?」


「ん? あぁ、エマとの事誤解してんじゃねぇかなって思って」


あ――。


聞かれて思い出した。


そういえば今日、瀬戸君とエマ、恋人同士みたいに歩いて行ったんだっけ。


瀬戸君には申し訳ないけれど、すっかり忘れていた。


「あいつさ、好きな男がいるんだよ」


「へ……?」


思いもよらない言葉に、私はキョトンとして瀬戸君を見つめる。


「ずっと、片想いってやつ? エマの奴、モテるくせに超奥手でさ。だから俺、相談役」


そう言い、自分を指差して見せた。


そう、だったんだ……。


あの2人を見たとき、たしかにいい気分ではなかった。


エマの、真っ赤になった顔。


あれが瀬戸君に向けられたものだと思っていたから。


でも、実際は違ったんだね?