愛して、芹沢さん

芹沢さんのスマホが鳴る。




「…ごめん、ちょっとだけ待ってて?」



画面を見るなり、いつもの曇り顔。



だけど、こうして電話に出たのは初めて…かも。




少し離れたところで微かに聞こえる芹沢さんの声に耳を澄ます。





所々しか聞けないこともあり、耳に全集中をかためる。





「えっ?……うん…わかった。じゃ、明日朝一でそっちに帰るよ……うん、大丈夫………じゃ」




スマホをポケットに直す素振りが見え、わたしは何事もなかったかのように大勢を戻した。




これから芹沢さんが言う言葉は予想済み。



「莉央ちゃん、明日朝一で帰らないと行けなくなった。ほんとにごめんっ」




と頭を下げられる。



そう言われることはわかっていたから驚きはしないけど、やっぱり気になってしまう。