愛して、芹沢さん

「あの、住所はどちらになりますか?」



乗り込むと、ミラー越しに視線を向けられていた。


「あ、___」




住所を伝えるとゆっくり走り出し、いつの間にか芹沢さんの姿は見えなくなっていた。



「失礼ですが、成瀬さん、ですよね?」


「え、はい。成瀬、です」




チラチラとミラーで目が合う。



「わたくし、芹沢社長の秘書を務めさせてもらっている、真木と言います」


「芹沢社長……。あの、今日はすみません」




2人のさっきの会話を聞いてしまった以上、謝らないわけにはいかない。




芹沢さんがスケジュールを変えたのは、わたしのせいだろうから。




「わたしが芹沢さんの眼鏡壊してしまって、それでこんなことに…」




だから、芹沢さんを責めないでほしい。



「謝らないでください。社長のスケジュール変更は今に始まったことではないので、慣れたものです。大変ではありますけど」