『あなたを永遠に愛しています』これが桜の花言葉というのは、嘘だったんだ。
 あれは、想士の――

 突風が、見つめ合う私たちの間を吹き抜ける。
 髪の毛先が口の中に入ってきたが、そんなこと気にならないくらい視線は釘付けにされていた。

 しばらくして、想士の方から視線を逸らした。そして何も言わないまま去っていく。嵐山で枝垂桜を見た時みたいに。
 私たちは別れた。前世で、永遠のお別れをしたのだ。
 だからこの出会いはなかったことにすればいい。そしたらあんな思いをしなくて済む。
 ぐっとこらえて想士とは反対方向へ歩き出す――はずだった。

「…………ッ」

 そんな単純なことが、できない。
 必死で追いかけ後ろから想士の袖を引いた。
 想士が物凄い速さで振り返る。

「姫はわかってない! 僕が一体、どんな気持ちで……ッ」

 表情を歪ませた。
 別れようと言っておきながらこんなことをするなんて、筋が通ってないとは思う。でも、これだけは伝えないといけない気がしたの。

「『あなたじゃないと満たされない』……桜の花言葉よ。知ってる?」

 本当の想いを花言葉だと偽る。想士の真似だ。

「……初めて知った」

 そう言いながらも想士は眉毛を下げて、困ったような喜んでいるような複雑な表情をしていた。私の気持ちに気付いてくれたようだった。