そうだよ、この花言葉はでたらめで当然なんだ、私が見た夢なのだから。
 いやしかし、花言葉に詳しい男子高校生なんて珍しいな……。

「で、ですよね、こんな花言葉ないですよねー」

 へらへら笑って誤魔化すが、変な人だと思われてるに違いない。ああもう、せっかくの出会いが台無しだ。早くこの場所から立ち去ってしまいたくなる。

「ねえ君、それどこで聞いたんだ?」

 夢に出てきた人が言ってたの、なんて素直に話したら脳内お花畑だと思われそうだ。何て言おう。

「まさか、夢で?」
「何でわかったの⁉」
「冗談のつもりだったんだけど……マジ?」

 視線が絡み合う。
 とたんに、頭の中で激しい嵐が巻き起こった。
 体は固まっているが、私の脳内を隅々まで駆け巡る嵐。
 それは価値観や思い込みなど私の根底にあるものを次々と破壊し、今までなかったはずの記憶を運んでくる。平安から現在に渡る、膨大な量の記憶を。
 脳内から溢れかえった記憶は、私の口を動かした。

「想士、なの……?」
「姫……」

 さっき教室で見たのは夢なんかじゃなく、私の前世の記憶だった……。