春。高層のマンションの最上階にぼく、九条誠は住んでいる。3dkの間取りで白いカラーが特徴的で、どこか殺風景な感じがする部屋にぼくは叔母である九条香りさんと一緒に暮らしている。暮らしているというよりは居候をさせてもらっているという表現のほうがただしいかもしれない。
 それは幼い頃に両親を亡くしてしまったことで同居を余儀なくされた香りさんがそう思っているかもしれないと思ってしまうぼくがいるからで、香りさん自信はそんな風に思っているような素振りは全くもってない。それどころか家族として受け入れてくれているようにも思うのだけれど、最近は家族というよりも恋人のように甘えてくるようになっているような感じがあるのもたしかだった。

 あの日をさかいにぼくたちは何度も身体を重ね、この異常な関係が日常化しつつあって、モラルとか道徳とか何も考えなくなっていた。

 高校生の入学式にも香りさんはぼくにべったりで終始腕を組んで歩くという醜態をぼくは晒してしまっていた。
「九条って、マザコンなん?」
 そうぼくに言ったのは同じクラスの前の席になった浜下だった。
 浜下は一見すると相撲取りのような体格で、身長180センチに体重120キロという巨漢の持ち主で耳に多数のピアスをつけている。

 どう見てもヤンキーの類いに違いないが、席が近いという事で入学式以降、最初に出来た友達でもある。友達づくりの基本は席が近いものから仲良くしていこうということだろう。実際に話して見ると見た目とは裏腹に気のいい奴って雰囲気を持っていた。