昼休憩になるとぼくたちは決まって校舎から離れてある学食に向かう。香りさんはお世辞にも家事が得意なほうではないし、料理に関しては才能がないと言える。玉子焼きくらいなら作れるかもしれないが、忙しい香りさんに家庭料理を求めるのは酷なことだと思っている。
「やっぱりさ、親の弁当ってなんか恥ずかしいんだよな」と浜下は言う。
 親の弁当を食べたことのないぼくにはわからない感情だった。それどころか一度くらいは食べてみたいと思っている。
「そうか、美味しければいいんじゃないか」
「いやいや、マザコンみたいで気持ち悪いって」
 親がきいたら泣くぞ。
「それに、昼食代を安くすませて残りをこずかいにできるからな、学食のほうがいいんだよ」
 浜下はドヤ顔で言うと、牛丼に肉うどんを頼んだ。それを見ると安く済ませるってなんだろうかと疑問符が頭をちらつかせる。ぼくは肉うどん一つを注文した。
「それだけで足りるのか?」と、浜下が訊いてくるのでぼくは、浜下の体格を下からの上へと見上げてて、
「お前の半分くらいしかないからな」と、言ってやった。
 浜下は自分の体型に少しばかり気にしている節があり、
「俺も少しは瘦せてぇなぁ」と言う。口だけだと分かっているので、あえて何も言わないでいた。