挨拶を終えて武本は振り返る事なく席に着く。それをみるともう少し日常会話をしていってもいいと思うのだけれど、如何せんどちらも接点がなさすぎる。それは時間が必要なのだろうと思うのだけれど、挨拶だけで満足そうな笑顔をする浜下を見ると、せめてもう一歩だけでもこの関係を深めてやりたいと思うのが友情だとぼくは思う。

 不意に浜下がぼくに訊いてくる。ニンマリしたやらしい顔を向けて、
「おまえは誰か好きな子いないの?」
「いない」即答するぼく。
「じゃ、このクラスでだれが一番可愛いと思う?」
「武本じゃない」
 そんなこ毛ほどにも思っていない。
「おい、本気で言ってるのか?俺が狙ってるのにお前も好きなのか?」
 さっきまでの笑顔が消えて真剣な表情で訊いてくる浜下。
「噓、噓、武本に興味なんてないよ」
「それは武本がブスだって言ってるのか?」
 めんどくせー。
「心配するなよ。ぼくは友人の好きな子に手をだすようなことはしないよ。それにぼくは美人なほうがタイプだしな。武本は可愛いいタイプだろ?だからぼくのタイプじゃないということ」
 ここまで言ったら納得するだろう。
「じゃあ、藤本みたいなのか?」
 藤本というのはこのクラスメイトの中で美人な生徒の一人で、この学校では珍しく黒髪のロングヘアーに背筋をいつもピンっと伸ばしている真面目な生徒だった。
「確かに美人な生徒だよな。でも、棲み分けが違うよな」
「棲み分けが違うってなんだよ」
「真面目すぎて近寄りにくい気がするんだよ」
「そういうもんか?」
 お前がそれをいうのか。