「みなみ、あいね……」

「あれっ、清水くんも、この学校だったんだ……」


びっくりしていた。だって、もう二度と会って話すことはないだろうと思っていたから。


あの日逢ってから別の日に電車で実際に見たことはほとんどなかったし、見かけても話しかけることはできなかった。


もし忘れられてたらって思うと、怖くて話しかけられなかったんだ。


でも今、その張本人が目の前にいて、こうやってお互いの存在に気づいたんだ。

それが、とてつもなくうれしい。


忘れてなんて、いなかった。
覚えていてくれたんだ。


「清水くん」

「ん、なに?」

「私のこと、あいねって呼んでほしいんだけど……」



心の中では、もうとっくにそう呼んでいた。

でも、心の中と現実では違くて、口を開くだけでドキドキする。


「…………っ」