遠くの方から電車が見え、アナウンスがホーム中に響く。


「ももな、なにしてんだよ。電車来た」

俺は向こう側の線路を覗いている姉のももなに呼びかけた。


「ここの線路にみかんが落ちてて、どうなるのかなーって」

ほんと、まじでなにしてんの。


「乗り遅れるだろ。早く来い」

「はーい」

こちらへかけてくるバカ姉貴は、桃が旬の春である3月生まれなのでももなと名付けられ、梨が旬の夏から秋である10月生まれの俺は、梨弦と名付けられた。



姉貴はうるさいしバカだし、鎖骨の下あたりまでしかない髪は、ちゃんと手入れしているのかどうか危うい。


そのくせに運動神経がよく足だけは速くて、俺にはその天性の才能がちょっと羨ましかったりする。