「ごめんな。

……俺と芹がじゃれあってんのとか、余計に傷つけただろ」



俺と芹の間には他意なんてものなくて。

ただただ仲が良くてふざけあってるだけで、それはみんな知ってるけど。それでも穂は、ぜったい傷ついただろうから。



「……つーちゃんは、変わんないね」



「………」



「昔から優しくて……

あの頃はまだ人見知りだったぼくに、誰よりもたくさん話し掛けてくれたのはつーちゃんなんだよ」



俺らに比べたら小さくて華奢な穂。

昔からそうだったから、どこかほかのメンツよりも小さな穂を、放っておけなかったのは事実だ。俺からすれば、それはごく普通のことで。



穂も、そんな感情を抱くとは思ってなかったんだろう。

どこかで、お互いに、すれ違ってしまっただけ。




「中学のときに、偶然……

つーちゃんが告白されてるところに遭遇して。みんなにつーちゃんは散々軽いって言われてるけど、女の子のこと、すごく丁寧に断ってた」



「………」



「"ごめん、好きな子いる"って。

はなちゃんが振り向くとかそんなの関係なくて、伝えてくれた女の子に正直に言えるつーちゃんがね、すごいかっこよかったんだよ」



それは、ただ。

俺がはなびを好きだって気持ちを、蔑ろにしたくなくて。それこそ、遠まわしにはなびの耳に入ればいいな、と邪なことを考えたことだってある。



「穂が……

女の子みたい、って言われてもそういう格好やめなかったのは……俺のせい?」



「なんでそんな卑下した言い方するのー?

もし万が一ぼくがつーちゃんのこと好きだってつーちゃんの耳に入っても、できるだけ拒否される気持ちが緩和されたらいいなぁって思ったのは、完全にぼくの下心だよ?」



でもたしかに、相手が穂だからその気持ちを素直に受け入れられたっていうのはある。

ほかのメンツのビジュアルで考えたら、いくら性別は関係ないと言ったって、それこそ「冗談だろ?」ってなってた気がするし。