「別に"まだ"椿のものじゃないなら、

俺がはなびを口説こうと関係ないだろ?」



「は……?」



「忘れたのか?

俺がはなびを好きだってお前も知ってるだろ」



ちょ、ちょっと染さん……?

椿がものすごい形相で染のこと睨んでるんですけど……?



「お前が幸せならそれでいい。

でも俺が幸せになるならその時は、」



今度は染が椿の手を払った。

そして、決してただの"幼なじみ"には見せないような、そんな表情で。椿と同じくらいに甘く、わたしのことを誘惑する。



「相手はやっぱり……

はなび。──俺は、お前がいい」




いつだってそばにいてくれるのは染だった。

小さい頃からずっとそばにいて、離れることなんて知らなくて。ノアと付き合うと同時に『花舞ゆ』から離れた時、はじめて幼なじみと距離ができた。



「染……」



「まあ、答えは知ってるけどな。

……1回フラれてんだから、怖いもんなんてねえし、どうせなら口説いとくかって話だ」



「ついでに口説くんじゃねえよ。

お断り。はなびにちょっかい出すのやめて」



染と椿の間にある空気が、やたら殺伐としている気がするのは気のせいだろうか。

……いや、気のせいじゃない。バチバチしてる。



「……はなちゃんさぁ。

染ちゃんのことはその場でふったんだよね?」



そんなふたりの空気に気づいているのか否か、もくもくとプリンアラモードを食べていた穂。

深く聞かなかったけどどうしてプリンアラモード食べてるんだろう。いや、美味しいけど。たぶん近くのコンビニに売ってたんだろうけど。