何をされるんだと固まったままのわたしの脚に、次に触れたのはわたしが履いていたサンダル。

砂を払ったそれを、椿が履かせてくれていた。



「ごめんな? ガラスの靴じゃなくて」



「……っ、」



そ、れって……シンデレラ、ですか。

しかもそう言うってことは、やっぱりわたしが恥ずかしくなってることに気づいてたんじゃない。わざとなんて、意地悪すぎる。



やっぱり、とてつもなく恥ずかしいのに。



「っ、シンデレラの靴って……

ほんとはガラスじゃなかったらしいわよ」



キラキラして、眩しい。

この場にはわたしたち以外いないから誰とも比べようがないけれど、椿のことがキラキラして見える。




「へえ。ま、なんでもいいけど。

……俺のお姫様なことには変わりないし」



「っ、」



「なりたかったんだろ? 誰かのお姫様」



言われて、思い出すのは過去に"お姫様になりたい"と言った自分の言葉。

覚えてたの……? わたしのくだらない一言を?



「こんなもんかな」



結局。両脚とサンダルの砂をすべて払ってくれた椿が、手をぱんぱんと叩いて立ち上がる。

髪色を変えた椿は、ぐっと大人っぽくなった。そのせいで、余計に些細なことでドキドキしてしまう。



落ち着け、わたし。

……相手は、昔から知ってるはずの椿だ。