一通り泣き止んで、落ち着いてから、ふたりにはゆっくりと事情を話した。

桃に学校を抜け出したことを連絡したら、わたしの荷物をあとで駅まで持ってきてくれるらしい。いつもうるさいけど、頼りにはなる。



元々千秋さんとノアは、わたしがいつここへ住むことになってもいいように、和室を空けてくれていたらしく。

布団なんかはあるから、とりあえず生活に必要な衣類や日用品だけ、あとでマンションに取りに行くことになった。



ひとまずここに2週間住んで、このままの方が良ければ今住んでるマンションから撤退する。帰りたくなったら、また一人暮らし。

ノアと千秋さんの前で両親に連絡して、5人で話した上でそう決めた。



「よかったね、俺も千秋も家にいて。

……誰もいなかったらどうする気だったの?」



「……何も考えてなかった」



「ふは。……ま、なんとかなったしいいけど」



よしよしと頭を撫でてくれるノアの手をそのままに、さっき千秋さんが淹れてくれた甘いカフェオレを飲む。

ノアは夜に『Bell』へと行ってしまうため、お昼を食べたら彼の車で一緒に荷物を取りに行く予定だ。




「はなびちゃんお昼何がいい?

いっぱい泣いてたし、おうどんとかの方が食べやすい?」



「あ、はい……すみません、」



「もう、謝らないで?

それじゃあ、ちょっとお買い物してくるわね」



いってらっしゃい、とお昼の食材を買いにいく彼女を見送って。

ノアにうながされて制服から、この家に置かれている自分のワンピースに着替える。



ぼんやりしていると、「はなび」と呼ばれて。

顔をあげたら、ちゅ、とくちびるが触れた。



「……大丈夫だよ。俺に甘えてな」



腕を伸ばして、抱きついて。

どうするわけでもなくただじっとして、目を閉じるだけ。