「結論から言うと、当たり障りのない普通の高校生だったよ。

……まあ、逆にそれが怪しいって言えば、それまでだけど」



芹が珠紀とすこし話した時に、さっきのことを伝言をしてくれたらしい。

わたしの元へやってきて普通の会話から入った珠紀は、そう言ってわたしに何気ないプロフィールを教えてくれた。



どうやら短時間のうちに調べて、短時間で彼のプロフィールを記憶したらしい。さすがだ。

経歴なんかもいたって普通で、「年齢詐称してホスト」というのも知っている通りの情報。確かに、特に当たり障りはない。



「でもまあ、ファイル自体は軽く弄ってあるんじゃないかな。

向こうにはプロがいるんだろうし、そういう形跡も消えるようにして、書き換えたんだと思うけど」



「『BLACK ROOM』のことは……?」



「ああ、それは前に調べたよ。念のため、俺の普段使いのじゃなくて使わなくなった初期化して偽の情報に書き換えたパソコンで調べたんだけど。

案の定ウイルスが仕込んであって、ハッキングしたら逆に情報を盗まれる仕様だった」



違うパソコン使って正解だったよ、と彼はにこやかに微笑んでいるのだけれど。

どうも笑える話じゃないというか。結局何も重要な情報はないというか。




「でもまあ、本当に椿とは仲良いみたいだよ。

今のところは、逆に動かない方が得策かもね」



「……、そう」



「心配なのは、わかるけど。

直接的に向こうが仕掛けてきてないから、俺らも対応できないし。染にだけは報告したけど、あとは俺と芹との間で、話止めておくから」



「……うん」



「大丈夫だよ、そんな顔しなくても。

俺らの先代には警察関係者もいるんだし、何より……これは他の誰にも言ってないんだけど、」



視線をまわりに這わせた珠紀が、わたしの耳元にくちびるを寄せる。

彼にしては近い距離感がめずらしいなと驚きながらも、じっとしていたら。



「俺の彼女、俺とおんなじぐらい情報に強い子だから。

……そっちにも話回して調べてもらってるし、何か出てきたら、ちゃんと連絡してあげるよ」