……律儀だな。

根はとても真面目というか。いや、別にグレてるわけでもねえし、はなびは素直で真面目だけど。



「じゃあ、ちょっとだけな」



「うん。紅茶淹れるから待ってて」



ぱたぱたとキッチンに入っていくはなびはいつも通りで、無意識に入っていた肩の力が抜ける。

自分が傷つきたいと思う人間はそういないだろうけど、相手が傷ついているのをただ見てるだけ、という状況に比べれば、よっぽどマシだ。



ソファに腰掛けて、そこでようやく彼女の一人暮らしの空間をゆっくり目にする。

リビングに置かれたアンティーク調の背の低い戸棚の上には、はなびとノア先輩が幸せそうに笑う写真のおさめられた写真立て。



「……はなび」



写真立ての隣には、はなびの誕生日が刻印されたテディベア。

おそらく、どころか、確実に先輩からもらったプレゼントだろう。




「ん? なに、椿」



「……いや、呼んでみただけ」



「なにそれ」



くす、と彼女が小さく笑みをこぼす。

トレーにカップをふたつ乗せてリビングへもどってきたはなびは、片方を俺の前に置いて。自分のはそのままに、一緒に乗せてあったガーゼに包まれた保冷剤を目元に当てた。



「……すっげえ変な質問していい?」



「……変な質問?」



「あ、保冷剤は目に当てたままでいいから。

……前に、芹に告白されてフッたって言ってただろ?」