段々、小さくなっていく後姿。



苦しくて


胸が痛くて…。



気づくとその場を駆け出していた。



すぐに追いついた慎也の腕を掴む。



振り返って驚いた慎也の瞳に
光る雫。



顔を背ける慎也にスーツの上着を押し付けた。



『要らない!!
返す!!!』



「ははは」



慎也の空笑い。


顔が見えなくてもわかるよ。


ずっと近くで見てきたんだから…。



「上着1枚すら拒絶かよ」



『バカッ!!!
そんな上着なんか要らない!!

私の事好きなら…上着なんかじゃなく
ずっと抱きしめてて…』


止めてた涙が溢れ出す。



ゆっくり振り返り

驚きを隠さず私を見つめる慎也。



「えっ…今…なんつった?」



『離れていかないで…

ずっと抱きしめててよ…』



「何言ってんだよ?
同情か?!
それとも俺を利用してぇのか?」




怪訝そうに冷たく言い放つ慎也から
目を逸らさずに
ただ真っ直ぐ見つめる。



『違う!!
そう思われても仕方ない事してきた。
でも…慎也がいなくなるなんて耐えられない。』



「でも、それは恋じゃねぇだろ」



『正直、男なんて二度と信じられない。
そう思ってた。』


男は裏切る生き物。



『でも、どんな時でも
傍にいてくれる慎也に
気持ちが揺らいでた。
信じられない、そう思ってたのに
いつしか慎也に恋愛感情はないって
自分に言い聞かせてた。』




「一時的な感傷に惑わされるな」




『違うよ。
そんなんじゃない。』



「そうは思えない」



カバンから携帯を取り出す。