「ちょっと!桃菜ちゃん!」

だから突然頭の上から降り注いだ声に驚いて顔を上げた。
そこには少しだけ怒り顔の真白の顔。 「小早川」と後ろから一緒に居た男の子が追いかけて来る。

桃菜ちゃん??? そういえば、真白から’桃菜’と名前を呼ばれるのは初めてだ。
いつもおばさんとかアンタとかしか呼ばれた事がなかった。

「あわ…あわわ…何で真白が……」

「何でじゃないわよ。館内に入る前から居るのに気が付いてたっつーの!
あれで隠れているつもり?!」

「ちが…!たまたま見る映画が一緒だっただけでしょう~?
後をついてきたわけじゃないのよ?」

「どうだか!それより行くよ!」

何とも男前に真白は私の腕をがっしりと掴みその場で立ち上がらせた。
瀬能さんも真白と一緒に居た男の子も酷く困惑しているのが分かる。

「行くってどこに?!」