「う…うう…」

瀬能さんは相変わらずほんわかとした癒し系のオーラを身にまとい
涙を流しながら映画を見ている私にハンカチやらティッシュを渡してくる。 …中々に用意の良い男性だ。

「ありがとうございます…」

小声で彼にお礼を言って、ちらりと真白達の方を見つめる。

真白は無表情で、寧ろつまらなさそうな顔をしてポップコーンを頬張りながら映画を見つめていた。  …あの子冷めた所あるから。

大丈夫かしら……そんな事を思いながらスクリーンを見つめていると、物語は佳境へと迫っていた。

ここは大切なシーンの一つだ。 ヒロインがやっと自分の気持ちに素直になり想いを伝えようとするが…
そこに彼の元カノが現れてしまうのだ!

『もしかしてって少しだけ期待していたけれど…
やっぱり元カノが好きなんじゃん。
私ばっかりこんな気持ちになって馬鹿みたい…』

ちーがう!誤解なんだよー!スクリーンに向かって熱く拳を握り締める私はまるで子供で
絶対に共感してはいけないであろう学生のラブストーリーに何故こんなに感情移入してしまうのだろう…。