「秀人さんも今から現場ですか~?今日は寒くなりそうですから、気を付けて下さいね~」
「ありがとう~。ハハ、俺は頑丈なのだけが取り柄だから大丈夫!」
嫌いなタイプではない。寧ろ扱いやすい中年男性といった感じである。
後々知る事になったのだが、小早川家には母親がいない。 何でも数年前に事故で亡くなったらしい。
相当な愛妻家だったらしく、今でも亡くなった奥さんを愛している愛情深い人だ。
「ちょっとお父さん、話ばかりしていないでさっさと朝ご飯食べちゃってよ。
片付けられないでしょう?」
台所から大きな声を出したのは、セーラ服にエプロンを身に包みフライパンを手に取る小早川家、長女の真白である。
中学三年生の15歳。
これまた碧人さんには似ていないけれど、父親にも全然似ていない大人っぽい美人だ。
因みに150センチで成長を止めた私の身長はとっくに抜かしている。 しっかり者で抜け目がなく潔癖症でもある。
「真白、おはよう。 うわあ~、美味しそうな朝ご飯だこと」
台所まで行ってフライパンを覗き込むと、むっつりと顔をしかめる。 そういう顔をすると、僅かに碧人さんに似ている。



