【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

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遅番の仕事を終えて帰って来ると、既に小早川家の住人は碧人さん以外帰宅していた。
真白がキッチンに立ち夕ご飯の用意をしている。

動物園のお土産の一件以来末っ子の藍も私に話をしてくれるようになった。

この日も疲れているにも関わらず、朱莉に「相談がある」と部屋に連れていかれる。 勿論藍も一緒についてきた。

「相談って何よ。お姉さんは仕事で疲れてるのよ」

「まあ、桃菜ちゃんももうアラサーだもんね」

アラサーは余計な一言だ。小学生に言われると地味に傷つく言葉である。

朱莉の勉強机の椅子に腰をおろすと、何故かそわそわし始めて茶の間へ続く扉の向こうを気にしていた。

「実はね、桃菜ちゃんに恋の相談があるの。 彼氏の事なんだけど」

「か、彼氏?! 彼氏ってあんたまだ小学生じゃないの!」

「やーだ、桃菜ちゃんってば頭かた~い。 今時の小学生に彼氏の一人や二人おかしくないって~」