【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


何故か碧人さんの話を聞いてこっちがホッとした。

碧人さんと私の家庭環境の事情は少し似ている。けれど違うのは恵まれているか、恵まれていないか、だろうか。

いや、碧人さんと私の人間性の違いなのかもしれない。

父が再婚した継母とは折り合いが悪かった。 だけど私も歩み寄ろうとは思わなかった。
年の離れた弟は拓斗(タクト)という。

私は全く拓斗に興味を示さなかったし、出来るだけ避けて生活してきた。 それでも小さい頃の弟は何も知らなかったので私と関わり合いを持とうとしてきた。

それを拒否してきたのは紛れもない自分だ。 高校を卒業してから家を出て、それから家族とは一度も会っていない。

「そういえばみやびさんは少しお前に似ていたなあ……」

「桃菜に?!」

碧人さんの意外な言葉に思わず声を上げる。

「まあ、大人っぽい人っていうよりかは子供っぽい人だったからなあ」

「何よそれ、桃菜が子供っぽいって言いたいの?」

「自分の気持ちに素直で、真っ直ぐで思いやりのある人だったよ」

優しい声でそういう碧人さんを見つめながら、唇を尖らせる。