【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


私の言葉に碧人さんは声を出して笑った。
その横顔が余りにも無垢で、沈んでいく夕陽と相まって思わずどきりとした。

「お前らしいな」

「本当だもん~。だって碧人さんの前では可愛い子ぶりっ子しなくってもいいし、楽ちんなんだもん。
動物園ってこんなにワクワクする施設だったんだね」

「……家族とは動物園に来た事がないって言っていたか」

さっきまで笑っていた碧人さんの声のトーンが真面目になる。

「へへ、まあね。別に今更家族と動物園に来たいなんて思わないけどさ…
碧人さんもうちの事情はちょっとは知ってるよね。
桃菜がまだまだ小さい時にお母さんが死んじゃって、お父さんは再婚したんだけど継母とうまくいかなくってねえ…。
すぐに弟が出来ちゃったから、桃菜からしてみたら三人家族みたいな感じだったんだよね」

「そうか。それは大変だったな」