「俺は伊織の秘書だから、合鍵は元々持っているんだ。
そっと扉を開けたらお前ら二人がぎゃーぎゃ騒いでいたからな」

「ちょ…盗み聞きなんて趣味が悪いですよ。 つーか一体どこから…」

「お前の私と碧人さんが結婚するなんてありえないって言葉は聴こえて来たよ。馬鹿でかい声で喋っているものだからな」

しっかりと重要な事を聞かれてしまっているではないか。
チッと碧人さんの大きな舌打ちは響いて、床に突っ伏す私と伊織さんはびくりと体を動かした。
こちらに手を伸ばしたかと思えば、握ったままの腕を引き離して私を立ち上がらせた。

「何を触り合っているんだ」

「さ、触り合ってるって変な言い方止めてよね?!
大体碧人さんが驚かすから悪いんじゃない……」

「そーだそーだ。おい、腕を痛めたんだが?!」

「全く。 遅くなりそうだから迎えに行くって連絡は見ていないのか?」