【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


一体何を根拠に碧人さんが私を好きだと言えただろう。 私が碧人さんを好きだっていう気持ちがバレるのは仕方がない事だろうけど。

「伊織さ……何を言っているの?」

「碧人はお前が好きだぞ?」

「止めて下さい!碧人さんが桃菜の事なんて好きなわけないじゃないですか!」

「いや、好きだ。 碧人の気持ちは俺にはよく分かる」

鈍感で天然ボケなあなたがそれを言う? 突っ込みたかったけれど、伊織さんは大真面目な顔をしたまま同じことを繰り返す。

「だって家をリフォームするのも桃菜の為だと言っていた。
だから俺は桃菜と碧人が結婚するものばかりだと思っていた」

「ひッ……。私と碧人さんが結婚なんてありえない事言わないで下さいよ!これだから世間知らずのお坊ちゃまは発想が奇天烈で怖いわ…」

世間知らずのお坊ちゃまという言葉はどうやらお気に召さなかったらしい。その通りだと思うけれど、伊織さんは眉をひそめて怒り顔になる。