天然ボケなのか、大真面目な顔をしたまま伊織さんは眉を少しだけしかめた。
この人とは話が噛み合わない。深入りしなくて本当に良かった。
「あのねぇ…
今私は伊織さんの会社で働いてるんですよ?
有難い事に正社員として雇って頂いて…」
「まあな。それは俺に感謝しろ。俺が社長の息子で良かったな」
「はいはい、すごく感謝しています。まあ、話を通したのは碧人さんでしょうけど。
それでまあ、有難い事に十分な給料を得ることが出来ています。細々と貯金もして一人暮らし用の資金も貯めました」
「だからどうして一人暮らしなんかするんだよ。
そのまま碧人んちに居りゃいいじゃないか」
「あのね、伊織さん!!!私がいつまでも小早川家にお世話になる理由がないじゃないですか!!
ただでさえ迷惑をかけているのに…!!」
「どうして迷惑なんだ?碧人はお前が好きなんだろう?」
大真面目な顔をして、あり得ない事を言う。
’好き’という単語だけでカーッと顔が熱くなる。
一瞬にして、顔だけ熱が上がった様だ。



