【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「ふじえだ、りりこ?」

伊織さんがその場で首を傾げる。
確か、大学が一緒っていっていたから、伊織さんが知らない訳ないけど。
それに自分の会社の社員でしょう?! 本当にこの人、真凛ちゃんにしか興味がないんだ…。

「ボヤージュの本社に勤めていて、今度marinの担当になった女性です」

「そういうのは…全部碧人に任せているから」

藤枝と何度も繰り返し、伊織さんは頭を抱えて考える。

「もぉ~~~!伊織さんとも大学一緒で同い年のはずですけど?!
それに……碧人さんと昔付き合っていたと言っていました……」

「碧人の彼女?」

はて?と首を傾げる伊織さんの頭を真凛ちゃんは思いっきり殴った。
私から見てもドン引きである。
本当の暴君は伊織さんでもなく碧人さんでもなく、真凛ちゃんだったのかもしれない。

「痛いなあ……。
碧人の彼女…ね。何人か知っているが、大学時代から一緒でボヤージュの本社に勤めているならばあの女狐の事か?」