【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「蛯原さんって可愛い物が好きなのね~。見た目のイメージ通りで可愛らしい人なのね」

どーせぶりっ子だとか可愛いこぶっていると思ってるんでしょ?
今までの経験上、キャリアウーマンタイプの女性にも嫌われるのは知ってるんだ。

関わりたくない。そうやって壁を初めから作るのは駄目な事だって分かっているけれど、特に碧人さんの元カノには今は関わり合いたくない。

「今責任者の関口さんに連絡しておいたので、もう少しで来ると思います~。ちょっと待っていて下さいね~」

これ以上関わるまいとにこりと愛想笑いをして、パソコンディスクから立ち上がる。

「じゃあ、私お店の方に出て来ますので~」

「蛯原さん」

その場から離れようと思ったのに引き止められて、振り返った藤枝さんは神妙な面持ちをしていた、と思う。

何かを言われるのが、怖かった。 この人が碧人さんの元カノと知ってから
’碧人’’莉々子’と呼び合う特別な関係だって、目の前で見て傷ついたから