【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


職場に来てこっそりとパソコンで賃貸情報を見ていても、ため息ばかり漏れる。

前の職場ではほぼ貯金をしていなかった。あればあるだけ使ってブランドのバックや靴などを買っていた。

けれどあの頃あれだけ欲しかったバックも靴も今は特に欲しくない。 それどころか小早川家ではスッピンで部屋着で過ごしているのが心地よい。

「狭くってもいいから、セキュリティーはちゃんとしたいよね」

独り言を言いながらパソコンに向き合っていると、突然肩を叩かれた。
跳ね上がる様にその場で小さくジャンプする。
し、心臓止まるかと。

「ひゃああ!!!」

「ごめんなさい。驚かせるつもりじゃなかったんだけど、声をかけようとしたんだけどえらく真剣な顔をしていたから」

振り返ると、そこには藤枝さんが立っていた。
今日もパンツスーツで、緩くウェーブのかかった髪の毛を後ろでまとめていた。

お化粧もそれほど濃くはないのに、やっぱり雰囲気のある女性だ。 さすがは…碧人さんの元カノだ。