【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


握られた腕の力が強くなる。

どうしてそんな真剣な顔をするの。 鋭い視線から目が離せなくて、心臓の音が大きくなるばかりだ。

困らせたくなんかない。
小早川家に、まだ居てもいい?そう訊ねるのも怖くって
碧人さんの側にいたいって言ったら、きっとあなたは困ってしまうでしょう?

まるでそれってプロポーズみたいだもん……。

繋がれた腕をそっと振りほどいて、碧人さんのもっと上にある桜の木を見上げる。
はらりはらりと舞い落ちる桃色の花びらは、音もなく私達の頭上を揺れている。

「はいはい、お父さん~~~心配しなくっても瀬能さんとは付き合わないよ。
実はタイプじゃないの。でも告白の断り方ってよく分かんなくって、せっかく一緒の職場なのに気まずくなるのも嫌だったから
碧人さんは桃菜が誰とでも付き合う女だと思ってるかもしれないけど、そういうのはもう止めたんだ。
だってどう考えても好きになれそうにないから」

「別に…そういう女だとは今は思っていない」