「それって、瀬能くんとか?」
「また瀬能さん~?ほんっと勘弁してよ」
瀬能さんの名前を出したのは碧人さんの癖に、途端に不機嫌な顔になる。
そんなに彼が気に食わないのだろうか…。いい人だと思うけど。
小さくため息を吐いて、桜の舞う道を歩きだそうとすると突然碧人さんに腕を掴まれた。
ふんわりと大きな風が舞って、まるでそこだけ時を止めたように静まり返る。
なのに自分の胸はドキドキしっぱなしで、戸惑う。
「あいつと付き合うのか?」
「碧人さんには関係ないじゃん……」
「関係ないけど、関係あるよ。 俺は……今桃菜を預かっている身なんだから、それこそ保護者みたいなものだ…」
「アハ、お父さんかっての。放っておいてよね~桃菜25歳なんだから、もう親の承諾もなしで結婚出来るんだから」
「冗談で言っている訳じゃない」



