第八章 あなたが好きだから、ここを出て行くの。




桜の花びらが舞い落ちるよく晴れた春に、朱莉の卒業式が執り行われた。

学校の匂いがとても懐かしい…。  余り学校自体に良い思い出はないのだけど、匂いは記憶を蘇らせて切ない気持ちに少しだけ酔いしれる。

「うわあ…これめっちゃ目立つじゃん…」

父兄に囲まれて、ただでさえ若い私達は目立ってしまう。
それにくわえ、碧人さんの身長は物凄く高くて嫌でも目立ってしまう。
目立ってしまう理由はただただ碧人さんの背が高いだけではないと思うが……

高身長で整った顔立ち。 前髪をくっきりと上げているから、その端正な顔が良く見える。
スタイルも元々良いから、スーツもとても似合う。  お店で見るのとは、また何かが違う。
ざわざわとした体育館で、碧人さんは周りの視線を一心に浴びていた。

「ちょっと…碧人さんのせいで目立ってるんですけど?」

「そうか?気のせいじゃないのか?」

平然として言って退けるけど、絶対に碧人さんのせいで目立っている。