「いいよ。藍の卒業式にも行ってあげる。 でもぉ~桃菜可愛くって若いからお母さんに見えるかな?!
きっと藍の卒業式に桃菜が行ったら若すぎて可愛いお母さんだって周りで話題になっちゃうよね~~?」
「自分で言うなよ…」 碧人さんの冷たいツッコミが入ったけれど、藍は甘えるように私に身を寄せて、曇りのない瞳で「桃菜ちゃん大好き」と言った。
その言葉にずきずきと胸が痛む。
だいじょうぶ。 約束なんて数年したらきっと忘れてしまう。
会わないようになれば、あんな人もいたなと記憶も薄れていく事だろう。
けれど寂しさや虚しさを知っている自分だから、小さい頃にした約束がどれ程重要かも本当は分かっているんだ。 無責任な言葉を言ってしまったかもしれない。
「まだ’一応’病人なんだから休んでいてもいいのに……」
夕飯を食べ終えた後台所で食器を洗っていると、碧人さんがやって来てさり気なく手伝ってくれる。
そういう小さな優しさも嬉しいものだ。
「いいの。楽しいし。別に家事も嫌いじゃないしね。 つーか、デカッ!」
隣で食器を拭いている碧人さんを見上げ、思わず大きな声が出てしまう。
デカいデカいとは思っていたけれど、何度隣に立たれても何度だって大きいと実感する。



