【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「とっくに学校に行きましたよ。 秀人さんなんかもっと前に仕事に出て行ったし
碧人さんはこんなにゆっくりでいいんですか?」

「今日は昼から本社に少し顔を出すだけだからね」

こたつに足を入れた碧人さんは、大きな欠伸をしながら携帯を弄る。
こういう人の事を眉目秀麗というのだろうか…。

そこにいるだけで目立ってしまう容姿。 寝起きでも普通の人よりずっと爽やか。

いつも優し気で甘いマスクで柔らかい話し方をする彼を知っている。ビジネスシーンではいつもそんな感じの人だった。

「じろじろ人の顔を見るなよ」

家では家の顔があるものだけど。

「別にじろじろ見てなんかいない。自意識過剰なんじゃないの?」

一応小早川家の大黒柱は父親である秀人さんである。 けれどどこかふんわりとしている彼に対し、しっかり者の碧人さんが実は実権を握っているような気がしなくともない。
秀人さん曰く、碧人さんは苦労人なんだそうだ。