「いらないよッ…自分で買うもん……。 でもパンツスーツかっこよかったなあ」

「かっこよかった?」

首を傾げる碧人さんの瞳をジッと見つめ、藤枝さんと彼女の名前を出す。
碧人さんは平然とした様子で、「ああ」と何とも言えない返答をする。

ここ最近喧嘩をしていたせいで雰囲気が悪かったけれど、今日は普通に話せている。 だからそれとなく切り出した。

「梓さんや瀬能さんが言ってた。 藤枝さんは碧人さんの元カノだって。
今日も二人の雰囲気見てたらただならぬ何かを感じたもんね~~~…。
それにすっごくお似合いだったしぃ」

碧人さんから視線をずらし、少しだけ嫌みったらしく言うと彼は目を丸くした。

「うわあ、情報早いなあ……」

それは肯定したとも取れる返答だ。 やっぱり、藤枝さんと付き合っていたのは事実なんだ。
噂で聞くのと本人の口から聞くのは全然違う。
胸の中がやっぱりモヤモヤして、少し経った後にシュンとしてしまうのが自分でも分かる。