【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


元々家事も嫌いではないから苦痛でもなく、小早川家の一員として認められたいとも思ってはいないけれど
居心地は悪くない。

お人好しな父親も、生意気な三姉妹も全然嫌いじゃない。

この家には、目には見えない愛情が溢れている。 綺麗でも立派な家でもないけれど、きちんと’家族’が構成されていて

陽だまりのような温かさがある。 一緒に暮らしていると時たまその中に自分が溶け込んでいると感じる事もあるが、勘違いしてはいけない。

あくまでも私は他人だから、ある程度の距離は保っていかないといけないと常日頃意識している。

いつまで経っても小早川家にいられるわけじゃない。  いつかは出て行く人間だ。 だから一線を引いておかなくてはいけない。

「ふあ~…よく寝たあ…
なんだ、真白達はもう学校に行ったのか?」

茶の間でこたつの中に入り紅茶を飲んでいると、まだまだ部屋着姿の碧人さんが欠伸をしながらやって来る。

いつもはスーツでびしりと決めている彼だけど、家に居る時は普通の20代の男性である。

いつも前髪が上がっていて、ワックスで決めている髪の毛にも寝ぐせがついている。  人とはやはり二面性がある生き物だ。