【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「しようがないじゃない。仕事なんだから……
それに私だってお父さんに卒業式も入学式もまともに来てもらった事ないわよ。いいじゃん、もう子供じゃないんだから」

…まだ子供だけどね。
そういえばうちも小学校の卒業式までは父が来てくれた。
中学生になってからは入学式も卒業式もこちらから来ないで欲しいとお願いした。

あの時、お父さんどんな顔していたっけ…。それさえも思い出せない遠い記憶だ。 けれど自分自身が父や家族を拒否し始めていたのは覚えている。

寂しくなかったと言ったら嘘になるかもしれない。 自分から来ないでと言ったのに身勝手な話ではあると思うけど。

「えりちゃんやゆいちゃんの所なんて両親揃って来てくれるって言ってたのにさあー。ちぇーッ……」

どれだけ大人びているように見えたって、小早川家の三姉妹はまだまだ子供なのだ。

「…桃菜が行こうか?」

鍋をつつきながらも自分で言った提案に自分自身が一番驚いていた。

え…!今私自分で何言っちゃってんの?!何保護者ぶってんのよ。 そんなのきっと余計なお世話だ。

しかし朱莉は目をキラキラと輝かせて、嬉しそうに私の側に寄ってきて腕を組む。