【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた


「’碧人’は新しい店舗のオープンに向けて忙しくなるのよねぇ?」

少しだけ媚びた言い方でそう言ったのが気になった。 しかしそれより何より彼女は’碧人’と彼を馴れ馴れしく呼んだ。

「それに碧人は伊織さんの秘書の仕事も忙しいしね」

「ああ…まあな。
でもまあ、莉々子が頼りになるから大丈夫だって思ってるよ」

り、莉々子?!
何で互いに呼び捨てで呼び合っているの!?

じろりと二人を訝し気に見上げると、藤枝さんは「ふふ」と小さく笑って梓さんが出してくれたお茶をすすった。

私の疑問が顔に出ていたのか、「私達、同期なの」と訊いてもいない質問に答えてくれる。

「へ、へぇ~…そうなんですねぇ」

同期……。
っていう事は碧人さんと同い年なのだろうか。 20代後半くらいだとは思っていたが
それからも藤枝さんは聞いても居ない事を私に話してくれた。